八月第一週

作業前のウォーミングアップに短い近況を書きます。

所属していたサークルの後輩が「毎年小説を書いて賞に応募している」と呟いていたのに憧れて、今年の目標は短編を一つ書くことにしました。とりあえず題をいくつか出してみます。屋上から落ちた後の話、散歩中に河が落ちてきた話、部屋の壁を掻きわけて海に行く話、でもサイケっぽいのは身にならないなと思ったのでやめました。

話を作る練習に歌詞を書こうと思いました。いつまでも思春期を名乗るくせに作詞作曲したことがないのは恥です。ただ曲の作り方はよく分からないので、コード進行とメロディはSong book から適当に拝借して、雰囲気はなんとなくフォークっぽくしようと思います。詞のテーマは「邪魔されたこと」に決めて、思いついた言葉を適当に呟きます。「しぬなら朝焼けの海辺がよかった」って言ってたので、理由やもっと具体的な情景を聞いたり、肝心な邪魔が何だったのかを問い詰めたら、なんだか歌詞っぽいのができました。一つ作るのに時間はあまりかからないことが分かったので、これからやる気がでない時は景気づけに歌詞を書こうと思います。

自宅周辺のケーキ屋さんを開拓しています。たくさん食べたら顔にでっかいニキビができました。

十月第四週

頭の中でぽつぽつ浮かんでいることをでたらめな順序で書きます。

 

九月中はフランスとドイツに出張していました。ドイツで偉い先生と昼ごはんを食べていた時、彼が言ったことの過激な要約です。

「世界情勢の変化に危機感を覚える。彼らに科学を伝えるべきではなかった」

科学は西から東へ伝えられたものである、というのは今だに僕たちの手足をつなぐ見えない鎖だと思っていたのですが、僕たちに限った話ではないということでしょうか。もっと若い人たちはどうなんだろうな。そしてもし鎖が見えるようになったとして、それが外せるのか、できたとして外したいのか、どうなんでしょう。

 

映画「バードマン」についてです。劇場公開していた頃は某評論家が持ち上げていたせいで観る気になれなくて、最近になってようやく観れました。すごく面白くて続けてもう一回観ました。

 

「天気の子」も二日連続で映画館へ観に行きました。物語的な世界へ入るために無理やり壁を撃つ構造がよかったです。今はもうそれぐらい固いのだと言われるとそうかもしれないという気がしてくる。適当な評論じみたことは他にもいくつか言えるのですが、実際のところは新海誠がこの映画を撮ったのだということに感動していた気がします。

 

境界上にいられる期間も残り少なくなってきました。視界はまだ真っ暗なままです。光は見えたかい。JB。

 

 

八月第三週

五月ごろ、ある庭園を散歩している時に聞こえてきた男女の会話です。

「これ、あなたの好きな木じゃなかったっけ」

「そう、サルスベリ

彼らが去った後、僕はそのサルスベリに近づいて観察しました。どれだけ見ても会話が見つからなくて、諦めて庭園に併設された美術館の方へ探しに行きました。僕は一人でした。一人だからこそ探していましたが、見つからなくて寂しかったです。

今朝になって急に思い出したことです。今はきっと開花しているはずですが、見に行って何か変わるでしょうか。

四月第二週

二年ぶりに日記を書きます。書いた方がいいと思ったからです。人と話す機会がどんどんなくなっていて、煮詰まるばかりの思考を何らかの方法で薄めなければいけない。もともと真面目な会話をすることはあまりないのですが、自分が意識せず口に出した言葉に対する相手の反応を見る、その刺激が恋しい。ずっと一人で部屋にいると返答してくれるのは自分か猫くらいです。

人と話す機会がないというと語弊があります。一週間に一度くらいは学校に行くし、先生や学生と数学の話をしたりする。そもそも実家に住んでいるから家族とは毎日話している。でもそういうことではないのです。どうしてってそれは自分の延長だったり、人じゃない。人じゃないってどういうことだ。説明するのは難しい。そもそもこの世界の人間のほとんどは僕にとってまだ人じゃないです。きっとこれからも人じゃないと思う。自分のことは人だと思っている。そうしないと始まらないからです。生きていく理由は、人である自分を理解するためです。決してナルシズムではないと思う。どうして自分はそう思うのか、あらゆる興味は結局そこにつきませんか。

何かしらを文章で書いて読み返すことには意味があります。中にいる自分と一度外に出た自分は違うからです。どうしてだろうな。理由は分からないけど、こうすることで擬似的に会話できます。

誰かと話していても相手の中に自分を探しているんだろう。そのことに僕は自覚的です。ただそれは都合のいいものを拾いたいわけじゃなくて、もやもやした疑問の答えを求めています。どんな疑問だ。だからもやもやしているんだって。

邪魔ばかりされて進められない。また今度だ。

十二月第二週

 

いつもは書きたいことがあるときに日記を投稿したり呟いたりするのですが、最近はそもそも書きたいことがあまりないです。僕にしては素晴らしく勉強している毎日に、体力を奪われてしまっているようです。ただ眺めるだけのゆったりした生活がしたい。働いている人に比べればそうだろうか。平日と休日の境目がないという点で傍観していられる時間は短いです。

 

僕の意思ではない何かが僕を支配しています。よく分からない義務感を植え付けてきて、それに従って動く僕の中からは何も出てくる気配がありません。僕は自分の支配を取り戻す必要があります。

 

「〜。僕は毎日、睡眠不足でふらふらしているけれど勉強はよくするんだ。ところが、その生活には希望がいらない。僕は子供の時の他は希望を持って生きたことがないし、その必要もなかったんだ」

この小説には死者がたくさん出てくる。主人公だって死んでいる。僕はまだ死にたくない。

九月第四週


来週から冬学期の授業が始まります。自由で長い夏休みに何かを期待していたのですが、思っていたほどの成果は得られませんでした。それでもこの夏で印象に残ったことを書いておきます。後で読んでみればもっと大事なことだったと思い直すかもしれません。


七月後半のよく晴れた日に、僕は友達に誘われて区立美術館へ行きました。お昼過ぎに最寄り駅で待ち合わせ、少し早く着いた僕は近くの木陰があるベンチで安部公房の短編集を読んでいました。駅の隣には線路へ沿うように遊歩道が伸びていて、ベンチはその始まりにあります。遊歩道の先を見るとスマホを覗きながらうろうろする人が何人かいました。その日はポケモンGOが輸入されて数日後だったのですが、こんなに太陽が照っている日によくやる気になるなと思いました。僕は日光が苦手だからです。

区立美術館はその遊歩道をずっと歩いて行った先にあります。実は何の展示を観るのかよく知らないままやってきました。有名な漫画家の個展らしい。僕は知らなかったけど有名らしい人でした。

その日の美術館には小学生くらいの子供を連れた家族が多かったです。展示されているのは子供が好きになるような作風の漫画ではない、両親がファンなのか、もしくは夏休みの宿題で感想文を書くなりしなければいけない、そんな辺りだろうかと考えていました。展示を見て回るときは大抵、同じタイミングで会場へ入った人と最後まで行動を供にすることになります。僕もある家族連れと同じペースで見ていくことになりました。小学生くらいの子供が二人、たぶん兄と妹で、どちらも展示にあまり興味が無さそうでした。

作品はかなりシュールなものばかりでした。始めに展示されていたのは漫画で、パロディや風刺的な漫画のある1ページが額に入れて飾ってあり、それがたくさん壁にずらっと並べられていました。面白いというよりはよく分からない、気持ち悪い絵が多かったです。次のコーナーでは落書きにしか見えない人間風味のキャラクターがぬるぬると変な踊りをする動画を延々上映していました。子供の兄の方は「いったい何だよこれ」と言いながら落ち着きなく動いていました。僕もそう思いました。

最後のコーナーには立体物が展示してありました。といっても、かなり広い空間の中心にろくろがぽつんと設置され、その上にヤカンが置かれているだけです。ろくろは自動操作でたまに回り出して、たまに止まります。さすがに僕もこの作者は何がしたいんだろうと悩みました。芸術みたいなものを小馬鹿にするのが目的なのでしょうか。それにしては安直だしかっこ悪い。僕より少し遅れて子供たちがやってきました。彼らはヤカンを眺めて、ヤカンが回り出すと一緒にその周りを回り、止まると一緒に止まりました。僕はとても悔しかったです。


美術館を出るとちょうど午後三時くらい、太陽はより強く照っていました。駅へ向かって歩いてる途中、僕はいつから日に当たるのが嫌になったのか思い出そうとしていました。

五月第四週


録り貯めておいたジョジョ第四部を一気見しました。序盤で好きなところは、虹村形兆が捨て台詞を吐きながらレッド・ホット・チリ・ペッパーに連れ去られるシーンです。直前の行動とその後の言動どちらも本音だろうからいい。そしてその後の億泰のセリフは個人的に考えさせられるものでした。

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人に本当だと思わせるのは行動なのだと思う。僕は言うこととやることが全く違う。行動を観察されて正体を見破られたくないから、せめて口先で誇張して、何もかも虚像であるように見せようとする。何が本当か分からなくしようとしています。しかしそれがかえってしょうがない自分を露わにしているみたいです。

正直になりたい。正直な作品を摂取しよう。チャールズ・ミンガスの音楽を聴く、楳図かずおの漫画を読みます。